レッドデータブックの役割と国の対応
野生生物を人為的に絶滅させないためには、絶滅のおそれのある種を的確に把握し、一般への理解を広める必要がある。
レッドデータブックとは、野生生物の種を絶滅のおそれのある程度(カテゴリー)に応じてランク付けをし、その生息・生育状況などについて解説した資料集であり、国際的には 1966 年(昭和41
年)に国際自然保護連合(IUCN)から初めて発行された。
我が国では、植物について平成元年に、(財)世界自然保護基金日本委員会と(財)日本自然保護協会の共同編集により「我が国における保護上重要な植物種の現状」が発行されたのが最初である。
環境省は、「我が国の絶滅のおそれのある野生生物」として、平成3年度に動物編を発行したが、生息状況や生息環境の変化に関する最新の知見・情報等を踏まえ、また、1994年(平成6年)にIUCNで採択された新しいカテゴリーの考え方に基づき、レッドデータブックの見直しを行う必要が生じた。
このため、環境省は平成7年度から、哺乳類、鳥類といった分類群ごとに専門家による検討会を設け見直し作業に着手し、平成12年2月の「爬虫類・両生類」から、順次改訂版レッドデータブックとしてとりまとめ、発行してきた。
平成14年度より、2回目のレッドリスト見直し作業に着手し、平成18年12月には、鳥類、爬虫類、両生類及びその他無脊椎動物の4分類群について、平成19年8月には、残りの哺乳類、汽水・淡水魚類、昆虫類、貝類、植物Ⅰ及び植物Ⅱの6分類群について、新たなレッドリストを公表した。
平成20年度より、3回目のレッドリスト見直し作業に着手し、平成24年度に第4次レッドリストとして公表した。また、このリストを元に、平成26年度にレッドデータブックを発行した。
平成27年度以降は、生息状況の悪化等によりカテゴリーの再検討が必要な種について随時見直しを行うこととし、第4次レッドリストの改訂版として現在までに4回見直しを行い公表した。
レッドデータブックは、生物学的観点から個々の種の絶滅の危険度を評価し選定したものであり、規制等の法律上の効果を持つものではないが、絶滅のおそれのある野生生物の保護を進めていくための基礎的な資料として広く普及を図り、野生生物への関心を高めるとともに、各種開発事業の環境影響評価などに活用され、自然環境保全への配慮が促進されることを目的としている。
また、レッドデータブックの掲載種の中でも特に保護の優先度の高い種については、さらに調査を進めた上で必要に応じ、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)」に基づく国内希少野生動植物種に指定し保護を図っていくこととしている。
環境省における見直し作業により、絶滅のおそれのある生物の種数は、レッドリスト2019で動物では 1,410に、植物では2,266となっており、絶滅のおそれがある生物の種数が増加している。
この理由としては、生息・生育環境の悪化などが大きいと考えられるものの、分類学上の整理が進んだり知見が充実したりしたことにより評価対象種数自体が増加したことも事実であることから、今後とも見直し作業を行い、最新の知見により改訂していくことが必要とされている。