植物編 概要
概要
「レッドデータブックあいち 2020 植物編」に掲載された種(亜種・変種および品種のスハマソウを含む)の数は、表5のとおりである。
絶滅のおそれのある種(絶滅危惧Ⅰ類及びⅡ類)の数は529であり、その内訳は、維管束植物(種子植物・シダ植物)が469、コケ植物(セン類・タイ類)が60となっている。また、現時点での絶滅危険度は小さいものの、生育条件の変化によっては「絶滅危惧」種に移行する要素を有する種(準絶滅危惧)は、維管束植物が111、コケ植物が5となっている。さらに、県内ですでに絶滅と判定された種は、維管束植物が47、コケ植物が3となっている。
また、絶滅危惧のいずれかの階級に該当するのは確実と思われるが、情報不足として判断を見送った種の数は3(いずれも維管束植物)である。
なお、環境省が平成30年度に公表した全国版レッドリスト掲載種のうち、本県での生育状況からは絶滅危険度が小さいなどとして愛知県版レッドデータブックではリスト外と判定された種および本県では評価外とされた種は29である。
「レッドリストあいち2015」掲載種と比較すると、絶滅のおそれのある種(絶滅危惧Ⅰ類及びⅡ類)の数は18増加し、その内訳は、維管束植物が17、コケ植物(セン類)が1となっている。また、県内では既に絶滅した種の数は2015年と同数であった。
ただし、絶滅種が同数でおさまったのは、評価区分基準の中で「絶滅」のうち情報量が少ないものの要件を、国や動物編に近づけて「過去35年前後・・・・(具体的には1985年以降)」に変更したことによる影響が大きい。
愛知県の維管束植物は、1990年代前半に多くの人の協力を得て広範な調査が行われ、今回のレッドデータブックも相当部分はその時に採集された標本が基礎資料になっている。しかしその後は基本的に補充調査で、当時ほどの規模の調査はできていない。
とりわけ愛知県で特に稀少植物が集中して生育する湧水湿地は、1988〜1991年に詳細な現況調査を行った(芹沢1992)が、立ち入ればどうしても撹乱を伴うため、その後は原則として調査を避けている。
当時調査に協力してくださった方の中には、すでに故人となられたり、調査活動から離れられたりした方も多い。そのため、植物が生育していた場所の正確な位置がわからないものも少なくない。
最近は三河山地ではニホンジカによる食害、丘陵地では里山の森林化に伴う管理された里草地の減少が激しく、調査に行っても稀少な植物がほとんど見当たらないこともしばしばである。
「おそらく絶滅またはそれに近い状態になっているだろう」と思われることも多いのだが、そのような場合でも大抵は前に確認された場所の正確な位置がわからないため、「絶滅」と断定しにくい。そのようなわけで絶滅した種の数は、実際には過去に比べ相当数増加しており、その分絶滅危惧ⅠA類が減少すると思われる。
本来ならば30年も経てば全面再調査が必要だが、愛知県の場合は県立自然史博物館がないために標本収蔵能力の制約があり、なごや生物多様性センターを拠点とすることができる名古屋市とその近郊以外は、全面再調査の目途は立っていない。
対象/評価区分 | 絶滅 (EX) |
絶滅のおそれのある種 | 準絶滅 危惧 (NT) |
情報 不足 (DD) |
計 | 国 リスト |
県内 自生 在来 種数 |
||||
絶滅 危惧 IA類 (CR) |
絶滅 危惧 IB類 (EN) |
絶滅 危惧 II類 (VU) |
小計 | 環境省 レッド リスト 掲載種 |
|||||||
維管束植物 (小計) | 47 (47) |
105 (90) |
175 (179) |
189 (183) |
469 (452) |
111 (115) |
3 (3) |
630 (617) |
28 (25) |
2,434 |
|
シダ植物 (小葉植物を含む) |
3 (3) |
12 (11) |
27 (22) |
24 (24) |
63 (57) |
11 (13) |
0 (0) |
77 (73) |
0 (0) |
312 |
|
裸子植物 | 0 (0) |
0 (0) |
2 (2) |
3 (3) |
5 (5) |
3 (3) |
0 (0) |
8 (8) |
0 (0) |
20 |
|
被子植物 | 原子被子植物 | 0 (0) |
3 (2) |
2 (3) |
3 (3) |
8 (8) |
0 (0) |
0 (0) |
8 (8) |
1 (1) |
45 |
単子葉類 | 15 (16) |
36 (31) |
54 (59) |
66 (64) |
156 (154) |
33 (32) |
0 (0) |
204 (202) |
10 (9) |
666 |
|
真正双子葉類 | 29 (28) |
54 (46) |
90 (93) |
93 (89) |
237 (228) |
64 (67) |
3 (3) |
333 (326) |
17 (15) |
1,391 |
|
コケ植物 (小計) | 3 (3) |
17 (14) |
19 (22) |
24 (23) |
60 (59) |
5 (6) |
0 (0) |
68 (68) |
1 (0) |
618 |
|
セン類 | 0 (0) |
16 (13) |
15 (18) |
19 (18) |
50 (49) |
5 (5) |
0 (0) |
55 (54) |
0 (0) |
443 |
|
タイ類 | 3 (3) |
1 (1) |
4 (4) |
5 (5) |
10 (10) |
0 (1) |
0 (0) |
13 (14) |
1 (0) |
175 |
|
計 | 50 (50) |
122 (104) |
194 (201) |
213 (206) |
529 (511) |
116 (121) |
3 (3) |
698 (685) |
29 (25) |
3,052 |
|
注1:表中( )内は、「レッドリストあいち2015」の掲載種数を示す。 注2:国リストとは、環境省が平成30年度に公表したレッドリスト掲載種のうち、本県のリスト対象外と判定された種を 示す。 注3:維管束植物の県内自生在来種数は「グリーンデータブックあいち2017」(愛知県環境部自然環境課, 2017)による。 亜種、変種、品種、雑種を含む。 注4:タイ類の県内自生在来種数は「グリーンデータブックあいち2018」(愛知県環境部自然環境課, 2018)による。外来 種(2種)を除く。 |