爬虫類
1.愛知県における爬虫類の概況
本県に記録のある爬虫類のうち、確実に繁殖、定着しているのは2目9科16種類(確実な外来種1種と史前帰化が疑われる3種を含む)である。カメ目のうち、ウミガメ類では産卵から孵化までが確認されているのはアカウミガメのみであり、それ以外のウミガメ類の記録(アオウミガメ、オサガメ等)は、漂着または偶発的な産卵とみられるため、今回の調査対象としていない。陸棲のカメ類のうち、確実に在来種と言えるのはニホンイシガメのみであり、このほか、確実な外来種であるミシシッピアカミミガメ、外来種である可能性が高いクサガメ、在来種ではあるが、国外からの移入集団の侵入が懸念されるニホンスッポンがいる。また、今回の調査では対象としなかったが、外来種のカメ類の記録は他にも知られており、特にカミツキガメ及びワニガメの2種は県内での繁殖、定着が懸念される。
有鱗目のうちへビ類では、4種のウミヘビ類に関する古い記録(新美,
1974)があるが、その後の記録がなく、過去にも現在にも繁殖、定着している状況が確認できなかったことから、今回の調査から除外した。一方、陸棲のヘビ類としては8種が知られており、いずれも本州全域の共通種で、本来は平野域から山地域までに広く見られる種であったと考えられるが、次項で示すように平野部での著しい減少のため、現在では丘陵地、山地域に偏った分布を示す種も少なくない。
トカゲ類では、本州全域に見られるニホンカナヘビと、東日本(伊豆半島を除く)に生息するヒガシニホントカゲの2種が生息する。いずれも本県下では平野部から山地域まで広く生息する普通種である。ヤモリ類では、西日本を中心に分布するニホンヤモリが生息する。この種は人家性で市街部に偏った分布を示す典型的なシナントロープで、外来種であるという説もある。県下での記録もすべて人家周辺から得られており、山間部では記録が少ない。
2.愛知県における絶滅危惧種の概況
アカウミガメは、遠州灘に面した渥美半島表浜が本県の最大の産卵地である。上陸産卵数は近年あまり顕著な変化をしておらず、地元自治体やボランティア等多くの人々の砂浜環境整備により維持されているのが現状である。最大の問題はダムの造成により河川からの砂の供給が乏しくなったことであるが、港湾建設、海岸護岸等も海流の変化をもたらし砂の供給を阻害している。加えて海浜利用の多様化による人為的な砂浜環境の悪化がある。
ニホンイシガメは、本県下の記録自体は少なくないが、近年の生息環境の悪化、及びアライグマを始めとする外来性の捕食者の増加に加え、クサガメとの交雑の問題や、温度性決定に起因する性比の偏り等、目に見えない問題が進行している可能性があり、近い将来絶滅危惧種に転じる可能性があることから、準絶滅危惧種とされた。ニホンスッポンについては、本県下の平野部、丘陵部の河川に普通に見られるが、本県でも移入された養殖個体が流出し、在来個体との交雑が進んでいる可能性が高く、明確な検証が行われていない。このため在来集団の減少が目に見えない形で進行している可能性が考えられることから情報不足とされた。
ヘビ類については、偶発的な遭遇に基づく記録方法によってしか情報が得られない特性があり、このことが生息状況の正確な把握を難しくしている。少なくとも平野部においてヘビ類全体の減少が著しいことは明らかであるが、丘陵地、山地域の情報は限られており、全県的な減少の様子を把握することは容易でない。本県では、そうしたヘビ類のうち3種が情報不足種とされた。このうち、タカチホヘビ、シロマダラについては、夜行性や地中性の生活史特性のためもともと調査が困難な種であり、正確な分布域や個体数密度等不明な点が多いために情報不足とされたものである。一方、ヤマカガシに関しては、かつて平野部の最普通種であったにも関わらず、現在では平野部ではほとんど見られなくなった点や、丘陵地、山地域においても遭遇の機会が減ってきたことを踏まえ、情報不足種とされた。同様にかつて最普通種だったにも関わらず現在平野部で激減した種にシマヘビがあり、こちらは現時点ではランク外とされたが、今後の動向によく注意する必要がある。
3. 愛知県爬虫類レッドリスト
目及び科の配列と名称、種の配列及び和名、学名は、原則として「グリーンデータブックあいち2018 哺乳類・鳥類・爬虫類編」を基に、新しい知見を加え整理した。