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鳥類

1. 愛知県における鳥類の概況

 前回の「レッドデータブックあいち2009」が刊行された後、日本鳥学会が2012年9月に「日本産鳥類目録改訂第7版」を刊行したが、分類の方法にこれまでとは全く異なるDNAの塩基配列の比較で種間の類似関係を判定する「分子系統学」を採用したことにより、「日本産鳥類目録改訂第6版」までのリストとは、目や科を含め、かなり異なった分類となっている。
 愛知県の野鳥についても「日本産鳥類目録改訂第7版」に準拠した結果、「レッドデータブックあいち2009動物編」に記載された愛知県の鳥類目録(2008年8月31日現在)で18目67科397種であったものが、今回の「レッドデータブックあいち2020動物編」(2019年9月30日現在)の分類では24目74科418種に増加している。この中で目数と科数が増加しているのは、分類方法の変更によるもので、実際にはオウチュウ科が増加しただけである。種数については、「日本産鳥類目録改訂第7版」で亜種が別種とされたことにより増加したキアシセグロカモメとオオムシクイの2種を除けば、県内で新しく確認された種はカラスバト、クロアシアホウドリ、アカアシカツオドリ、タンチョウ、カンムリカッコウ、オニカッコウ、ヒメクロアジサシ、マミジロアジサシ、カラフトワシ、オウチュウ、ハイイロオウチュウ、タカサゴモズ、キバラガラ、チフチャフ、キマユムシクイ、コノドジロムシクイ、ウチヤマセンニュウ、オジロビタキ、ミヤマビタキの19種である。
 新しく確認された19種の中では、本来の分布域から迷行して飛来したものが4種、渡りや移動のコースを僅かに外れて飛来したと思われるものが6種、ユーラシア大陸の西から分布を拡大しているものが2種、中国南部や東南アジアから分布を拡大しているものが7種である。最近の約10年で新しく確認された種の約半数が、温暖化など地球規模の気象変動による分布の変化で飛来している可能性がうかがえる。
 「日本産鳥類目録改訂第7版」では24目81科633種が記載されているが、2019年9月30日現在県内の野鳥は全国と比較して、目数で100%、科数で91%、種数で66%が記録されている。
 上記以外で、現在県内に生息して繁殖している国外移入種は、コジュケイ、ドバト、ソウシチョウの3種のみである。過去の一時期繁殖が確認されていたワカケホンセイインコや、1970年代から継続して繁殖が確認されていたベニスズメは、現在の県内では全く確認されなくなっている。ガビチョウは現在も県内における繁殖の確認はないが、今後も注意して観察を続ける必要がある。

2. 愛知県における絶滅危惧種の概況

 愛知県では「第三次レッドリスト・レッドリストあいち2015」(2015年3月)より、鳥類のみが県内で繁殖する種について、評価の対象を「繁殖」と非繁殖期の「通過」又は「越冬」の個体群として、2通りの評価を行っており、繁殖していない種についても「通過」又は「越冬」の個体群としての評価を実施している。
 県内で繁殖する種の中でも、特に標高の高い山地の環境で、現在繁殖が確認されないマミジロ、ビンズイ、ノジコの3種について、「繁殖」個体群が「絶滅」と評価された。同様の環境で繁殖する種にはオオジシギ、アカハラ、ホオアカなど多くの種もあるが、近年の繁殖期における繁殖地周辺での確認記録の有無や、平地や沿岸部で現在繁殖が確認されていないヨシゴイやツバメチドリなどを含め、積極的な環境改善などによる繁殖復活の可能性までを含めて、現時点では「繁殖」個体群の評価を「絶滅危惧ⅠA類」に止めている。また、過去の一時期に県内で繁殖していたコヨシキリなどの種については、判断が非常に難しいところであるが、ツバメチドリやセイタカシギほど継続した繁殖ではなかったものと判断されて、今回はとりあえず「リスト外」と評価された。
 上述のように県内では特に標高の高い山地と、沿岸部の干拓地や埋立地、および河川や池沼の裸地や湿地で繁殖する種では、「繁殖」が事実上「絶滅」となっていたり、絶滅危惧のランクが高くなった種が多い。同時にシギ・チドリ類を含む水鳥にとって、水辺や湿地は渡りの中継地や越冬地としても重要な環境であるため、こうした水辺や湿地を「通過」あるいは「越冬」の場所としている渡り鳥の大半でも、絶滅危惧のランクが大きく上昇している。

【参考:除外種リスト】

 「レッドリストあいち2015」掲載種のうち、今回の見直しによってリストから除外された種(地域個体群)とその理由は以下のとおりである。

除外種
No. 目名 科名 和名 見直し前県ランク 除外理由
1 チドリ シギ ハマシギの越冬群(藤前干潟および庄内川河口周辺、境川および矢作川河口周辺、汐川干潟、伊川津干潟および福江湾周辺) LP 県内の越冬地全域で減少傾向が継続しているため、特定の地域個体群に限らず種全体として評価することとした。

3. 愛知県鳥類レッドリスト

 目及び科の配列と名称、種の配列及び和名、学名は、原則として「グリーンデータブックあいち2018 哺乳類・鳥類・爬虫類編」に従った。評価対象ごとにランクが異なる場合は、最上位の評価区分に記載した。