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評価の区分及び方法(植物編)

評価の区分及び方法

 維管束植物の評価は、以下の方針で行った。
 まず、何らかの人為に伴って愛知県に入ってきたと判断される、あるいはその可能性が高い種類は、原産地が日本国内であるか国外であるかを問わず、評価の対象から除外した。ただし、カジノキは一般に植栽と考えられている種であるが、原産地が不明であること、豊橋ではかなり自然度の高い場所に生育していることを考慮し、豊橋のものに限定して評価の対象とした。ビャクシン、レンリソウ、ノハラクサフジなど移入の可能性はあるが自生の可能性を否定しきれない種は、一応評価の対象とした上で、必要に応じ注釈を加えることにした。県内に自生集団と移入集団があるマツバラン、コケミズなどや、自生の可能性がある集団と明らかに移入である集団があるナラガシワなどは、移入集団は除外し、自生または自生の可能性がある集団に限定して評価を行った。
 次に、自然状態で県内に分布を拡大してきたと判断されるが、侵入初期でまだ定着状態に至っていない、またはいなかったと判断されるハチジョウシダモドキ、ハマナツメなどは、「希少偶産種」として、評価の対象から除外した。希少偶産種と判断した種の県内での生育状況は、699頁にまとめて記述した。
 コケ植物についても、何らかの人為に伴って愛知県に入ってきたと判断される種類は評価の対象から除外した。
 評価対象種の絶滅のおそれの程度については、調査結果をもとに表3に示す評価区分基準に従い判定した。
 維管束植物は、調査対象種について、愛知県内に現存する「個体数」と「集団数」を集計するとともに、「生育環境の減少傾向」、「人為的圧力の程度」、「地域固有性」を加えた5項目について、それぞれ表4に示す4段階で評価し、その総点をその種の評価点とし、総点16以上を絶滅危惧ⅠA類(CR)、14〜15を絶滅危惧ⅠB類(EN)、12〜13を絶滅危惧Ⅱ類(VU)、11を準絶滅危惧(NT)、10以下をリスト外と判定した。ただし、一部の種については補正項を加え、更に特殊事情があると判断される種については総点に1を加え、または総点から1を減じて、評価を行った。手法の根拠及び詳細は、資料編に示した。また、愛知県ではリスト外と判定されたが、環境省が平成31年1月に公表した全国版レッドリストに掲載されている種は、「国リスト」としてリストに掲載した。
 コケ植物については、維管束植物と同程度の定量的な評価は困難であったため、収集された情報をもとに、全国的な分布の状況等を勘案して総合的に判断・評価を行い、定性的要件に従い絶滅のおそれの程度を判定した。手法の詳細は、資料編に示した。
 なお、評価区分のうち野生絶滅は、原産地や遺伝的混乱の防止体制に疑問があると思われる場合もあり、また個人的に管理されているものをすべて確認することも困難であると判断されたので、今回のレッドデータブックでは絶滅とあわせ、絶滅・野生絶滅として扱うこととした(ただし、表記上は絶滅(EX)とした)。
 判定の結果は、「レッドデータブックあいち2020植物編」の基礎となる第四次レッドリスト(案)としてとりまとめた。そして、レッドリストの精度の充実を図るため、平成31年4月から令和元年5月にかけて情報及び意見(パブリックコメント)の収集を行った。これらを勘案し、更に令和元年11月末日までの情報を加えて最終的な判定を行い、最新のレッドリストとして本書に掲載した。なお、パブリックコメントで寄せられた意見のうち本書の記述に反映できなかった主要なものは、資料編 Q&A に収録した。

表3 「レッドデータブックあいち2020植物編」の評価区分基準
区分及び基本概念 定性的要件 準定量的
要件※

絶 滅
Extinct (EX)

野生絶滅
Extinct in the
Wild (EW)
愛知県ではすでに絶滅したと考えられる種。
野生では絶滅し、飼育・栽培下でのみ存続している種。
過去に愛知県に生息したことが確認されており、愛知県において少なくとも野生ではすでに絶滅したと考えられる種(飼育・栽培下では存続している種を含む)。
【確実な情報があるもの】
1 今回の調査や記録により、すでに野生で絶滅したことが確認された。
【情報量が少ないもの】
2 過去 35 年間前後の間に、信頼できる生息の情報が得られていない。

絶滅危惧I類
Critically
Endangered +
Endangered
(CR+EN)
絶滅の危機に瀕している種。
現在の状態をもたらした圧迫要因が引き続き作用する場合、野生での存続が困難なもの。
次のいずれかに該当する種。
【確実な情報があるもの】
1 既知のすべての個体群で、危機的水準にまで減少している。
2 既知のすべての生息地で、生息条件が著しく悪化している。
3 既知のすべての個体群がその再生産能力を
上回る捕獲・採取圧にさらされている。
4 ほとんどの分布域に交雑のおそれのある別種が侵入している。
【情報量が少ないもの】
5 それほど遠くない過去(10年〜35年前後)の生息記録以後確認情報がなく、その後信頼すべき調査が行われていないため、絶滅したかどうかの判断が困難なもの。

絶滅危惧IA類
(CR)
ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの。 表4の評価点の合計が16以上

絶滅危惧IB類
(EN)
IA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの。 表4の評価点の合計が12〜13

絶滅危惧II類
Vulnerable
(VU)
絶滅の危険が増大している種。
現在の状態をもたらした圧迫要因が引き続き作用する場合、近い将来「絶滅危惧I類」のランクに移行することが確実と考えられるもの。
次のいずれかに該当する種
【確実な情報があるもの】
1 大部分の個体群で個体数が大幅に減少している。
2 大部分の生息地で生息条件が明らかに悪化しつつある。
3 大部分の個体群がその再生産能力を上回る捕獲・採取圧にさらされている。
4 分布域の相当部分に交雑可能な別種が侵入している。
表4の評価点の合計が12〜13

準絶滅危惧
Near Threatened
(NT)
存続基盤が脆弱な種。
現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」として上位ランクに移行する要素を有するもの。
次に該当する種。
生息状況の推移から見て、種の存続への圧迫が強まっていると判断されるもの。具体的には、分布域の一部において、次のいずれかの傾向が顕著であり、今後さらに進行するおそれがあるもの。
1 個体数が減少している。
2 生息条件が悪化している。
3 過度の捕獲・採取圧による圧迫を受けている。
4 交雑可能な別種が侵入している。
表4の評価点の合計が11
情報不足
Data
Deficient
(DD)
「絶滅」「絶滅危惧」「準絶滅危惧」のいずれかに該当するのは確実と判断されるが、評価するだけの情報が不足している種。 (維管束植物)
文献等により愛知県内に現存する、またはごく最近まで現存していたことは確実と判断されるが、裏付けとなる標本が確認できず、絶滅のおそれの程度について責任ある評価ができない種。ただし、すでに絶滅したと判断される種は「絶滅」と評価した。
国リスト 環境省レッドリストに掲載されているが、愛知県において上記の要件に該当しない種。
表4の評価点の合計が10以下
※準定量的要件は維管束植物のみ適用。
表4 各評価項目の評価基準(維管束植物)
評価項目 評価点 4 3 2 1
個体数 10未満 100未満 1,000未満 1,000以上
集団数 1〜2 3〜5 6〜15 16以上
生育環境の減少傾向 著しく減少 やや減少 増減なし 増加
人為的圧力(開発圧・採取圧)の程度 極めて強い 強い あり なし
地域固有性 強い やや強い 弱い なし