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評価方法の詳細 昆虫類(トンボ類)

昆虫類(トンボ類)の評価方法

 環境省は 1997 年のレッドデータブック新カテゴリー採用にあたり「数値基準による客観的な評価は今までの定性的な評価よりも好ましいこと、この新カテゴリーが今後世界的に用いられていくと考えられることから、基本的にこのカテゴリーに従うこと」としている。
 愛知県のトンボ目は過去のデータの蓄積が比較的豊富であり、数値的な評価が可能と判断したので、選定者の主観の影響を受けやすい定性的な要素を極力取り除く方向で選定を進めた。
 ただし環境省の示す選定基準は、①脊椎動物を主対象としたものである、②「生息地が過度に分断」「個体数に極度の減少」といった定性的な基準が含まれている、などの曖昧な点があり、そのまま愛知県のトンボ目に適用することは困難と思われたので、下記のように若干改訂した基準を策定した。

愛知県のトンボ目のレッドリストカテゴリー定義

ア.分布の単位を、平成の大合併前の旧市町村※1とする。その上で、各種の市町村単位での現存数※2と絶滅率※3を、環境省が示す数値基準にほぼ沿った形で、カテゴリーに当てはめ、これを選定の基本とする。
 絶滅      : 過去50年間信頼できる生息情報が得られていない
 絶滅危惧ⅠA類 : 絶滅率80%以上、かつ現存数1以下
 絶滅危惧ⅠB類 : 絶滅率50%以上、かつ現存数1.5〜5
 絶滅危惧Ⅱ類  : 絶滅率20%以上、かつ現存数5.5〜10
 準絶滅危惧   : 絶滅率20%以上、かつ現存数10.5〜15

イ.現存数や絶滅率では表せない、各種の生態要素等を考慮し、上記カテゴリーの補正を行う。
ex.発生地以外へ飛来しやすい移動力の高い種や移入の可能性のある種については、ランク下げを検討する。
ウ.将来の生存可能性を考えるため、生息地の環境破壊のされやすさを考慮し、補正を行う。
ex.環境破壊をされやすい、平野部とその周辺部に生息する種については、ランク上げを、逆に山間部に生息する種については、ランク下げを検討する(山間部を主たる生息地とし、かつ県内10市町村以上で記録のある種は、選定対象から除外した)。

※1 分布単位を「市町村」とした理由
 愛知県に定着しているトンボには東海地方特産といった分布の狭い種はおらず、ほとんどが本州に広く分布する。 よって、その分布をマクロ的にみるには、ある面積毎の分布状況をみれば良い。その場合、面積の単位を小さく(=区画を多く)するほど精度は上がるが、現地調査にかけられる時間等を考慮して、前回に引き続き、県内の「旧市町村」を分布の単位として採用する。 市町村毎の面積差といった問題はあるが、分布概況を把握するには88の区画があれば十分と考えた。 なお、平成の大合併により、特にトンボが多く現存する丘陵地から山間部の市町村ほど合併した。 すなわちトンボの現存しない平野部の市町村ほど合併していないので、現在の市町村体制で絶滅危惧を判定すると、仮にトンボの減少が全く無い場合でも絶滅率は高くなってしまう。絶滅危惧の判定精度を上げるためにも、旧市町村単位での判定を継続するのが適当と判断した。
※2 「現存」の定義
A.現存    :約10年以内に現存を確認し、かつ生息環境も残されている。
B.現存可能性有:約10年以内に確認されたが、発生地が不明で、現存を確認できない。または、約10年以内に現存を確認していないが、生息環境は残されていると推測される。
C.絶滅    :生息環境が破壊されており、生存の可能性はない、または極めて低い。
※3 「絶滅率」の定義
(絶滅率)=((記録のある市町村数)−(現存する市町村数))÷(記録のある市町村数) 
現存する市町村数:(A.現存)=1 、(B.現存可能性有)=0.5 、(C.絶滅)=0 と数える。