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評価の区分及び方法(動物編)

評価の区分及び方法

 調査対象種の絶滅のおそれの程度については、調査結果をもとに表 2 に示す評価区分基準に従い判定した。
 「絶滅」の評価については、「過去に確実に生息していた種」と判断する文献や標本の整備状況及び移動能力が各分類群毎に異なることから、表3に示す要件により判定した。なお、評価区分のうち野生絶滅は、原産地や遺伝的混乱の防止体制に疑問があると思われる場合もあり、また個人的に管理されているものをすべて確認することも困難であると判断されたので、今回のレッドデータブックでは絶滅とあわせ、絶滅・野生絶滅として扱うこととした(ただし、表記上は絶滅(EX)とした)。また、愛知県ではリスト外と判定されたが、環境省が平成 31 年 1 月に公表した全国版レッドリストに掲載されている種は、「国リスト」としてリストに掲載した。
 判定の結果は、「レッドデータブックあいち2020動物編」の基礎となる第四次レッドリスト(案)としてとりまとめた。そして、レッドリストの精度の充実を図るため、平成31年4月から令和元年5月にかけて情報及び意見(パブリックコメント)の収集を行った。これらを勘案し、更に令和元年11月末日までの情報を加えて最終的な判定を行い、最新のレッドリストとして本書に掲載した。なお、パブリックコメントで寄せられた意見のうち本書の記述に反映できなかった主要なものは、資料編Q&Aに収録した。

1. 哺乳類
 収集された情報をもとに、全国的な分布の状況等を勘案して総合的に判断・評価を行い、定性的要件に従い絶滅のおそれの程度を判定した。

2.鳥類
 鳥類については、繁殖、越冬、通過の時期で評価が異なることから、評価対象個体群ごとに評価を行った。また、各調査対象個体群について、愛知県内における「推定個体数」、「個体数の増減」、「生息環境の減少傾向」、「推定生息地数」の4項目について、それぞれ表4に示す5段階で評価し、その総点をその種の評価点とし、原則として総点28以上を絶滅危惧ⅠA類(CR)、22〜27を絶滅危惧ⅠB類(EN)、16〜21を絶滅危惧Ⅱ類(VU)、10〜15を準絶滅危惧(NT)と判定した。

3. 爬虫類
 収集された情報をもとに、全国的な分布の状況等を勘案して総合的に判断・評価を行い、定性的要件に従い絶滅のおそれの程度を判定した。

4. 両生類
 収集された情報をもとに、全国的な分布の状況等を勘案して総合的に判断・評価を行い、定性的要件に従い絶滅のおそれの程度を判定した。

5.汽水・淡水魚類
 収集された情報をもとに、全国的な分布の状況等を勘案して総合的に判断・評価を行い、定性的要件に従い絶滅のおそれの程度を判定した。

6.昆虫類
 収集された情報をもとに、全国的な分布の状況等を勘案して総合的に判断・評価を行い、定性的要件に従い絶滅のおそれの程度を判定した。なお、トンボ目については、データの蓄積が比較的豊富であることから、極力定量的な評価手法を用いた(手法の詳細は資料編参照)。

7. クモ類
 収集された情報をもとに、全国的な分布の状況等を勘案して総合的に判断・評価を行い、定性的要件に従い絶滅のおそれの程度を判定した。

8.貝類
 収集された情報をもとに、全国的な分布の状況等を勘案して総合的に判断・評価を行い、定性的要件に従い絶滅のおそれの程度を判定した。
 貝類においては収集、整理可能な情報が非常に少なく、多くの種について客観的に評価できるデータが不足している。多くの希少種は限られた生息場所に飛び飛びに分布することが多く、定量的な調査は非常に困難である(風呂田ほか,1999:木村・木村,1999)。従ってある程度定性的なランク付けを行わざるを得なかった。

表2 「レッドデータブックあいち2020動物編」の評価区分基準
区分及び基本概念 定性的要件 準定量的要件※

絶 滅
Extinct (EX)

野生絶滅
Extinct in the
Wild (EW)
愛知県ではすでに絶滅したと考えられる種。
野生では絶滅し、飼育・栽培下でのみ存続している種。
過去に愛知県に生息したことが確認されており、愛知県において少なくとも野生ではすでに絶滅したと考えられる種(飼育・栽培下では存続している種を含む)。
【確実な情報があるもの】
1 今回の調査や記録により、すでに野生で絶滅したことが確認された。
【情報量が少ないもの】
2 過去50年間前後の間に、信頼できる生息の情報が得られていない。
過去50年間信頼できる生息情報が得られていない

絶滅危惧Ⅰ類
Critically Endangered + Endangered (CR+EN)
絶滅の危機に瀕している種。
現在の状態をもたらした圧迫要因が引き続き作用する場合、野生での存続が困難なもの。
次のいずれかに該当する種。
【確実な情報があるもの】
1 既知のすべての個体群で、危機的水準にまで減少している。
2 既知のすべての生息地で、生息条件が著しく悪化している。
3 既知のすべての個体群がその再生産能力を上回る捕獲・採取圧にさらされている。
4 ほとんどの分布域に交雑のおそれのある別種が侵入している。
【情報量が少ないもの】
5 それほど遠くない過去(30年〜50年前後)の生息記録以後確認情報がなく、その後信頼すべき調査が行われていないため、絶滅したかどうかの判断が困難なもの。
絶滅危惧IA類
(CR)
ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの。 表4の評価点の合計が28以上
市町村単位で絶滅率80%以上、かつ現存数1以下
絶滅危惧IB類
(EN)
ⅠA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの。
表4の評価点の合計が22〜27
市町村単位で絶滅率50%以上、かつ現存数1.5〜5

絶滅危惧Ⅱ類
Vulnerable (VU)
絶滅の危険が増大している種。
現在の状態をもたらした圧迫要因が引き続き作用する場合、近い将来「絶滅危惧I類」のランクに移行することが確実と考えられるもの。
次のいずれかに該当する種
【確実な情報があるもの】
1 大部分の個体群で個体数が大幅に減少している。
2 大部分の生息地で生息条件が明らかに悪化しつつある。
3 大部分の個体群がその再生産能力を上回る捕獲・採取圧にさらされている。
4 分布域の相当部分に交雑可能な別種が侵入している。
表4の評価点の合計が16〜21
市町村単位で絶滅率20%以上、かつ現存数5.5〜10

準絶滅危惧
Near Threatened (NT)
存続基盤が脆弱な種。
現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」として上位ランクに移行する要素を有するもの。
次に該当する種。
生息状況の推移から見て、種の存続への圧迫が強まっていると判断されるもの。具体的には、分布域の一部において、次のいずれかの傾向が顕著であり、今後さらに進行するおそれがあるもの。
1 個体数が減少している。
2 生息条件が悪化している。
3 過度の捕獲・採取圧による圧迫を受けている。
4 交雑可能な別種が侵入している。
表4の評価点の合計が10〜15
市町村単位で絶滅率20%以上、かつ現存数10.5〜15

情報不足
Data
Deficient
(DD)
「絶滅」「絶滅危惧」「準絶滅危惧」のいずれかに該当する可能性が高いが、評価するだけの情報が不足している種。 環境条件の変化によって、容易に絶滅危惧のカテゴリーに移行し得る属性(具体的には、次のいずれかの要素)を有しているが、生息状況をはじめとして、ランクを判定するに足る情報が得られていない種。あるいは確認例が極めて少なく、希少であるか否かも不明な種。
1 どの生息地においても生息密度が低く希少である。
2 生息地が極限されている。
3 生物地理上、孤立した分布特性を有する(分布域がごく限られた固有種等)。
4 生活史の一部または全部で特殊な環境条件を必要としている。
地域個体群
Threatened
Local
Population
(LP)
その種の国内における生息状況に鑑み、愛知県において特に保全のための配慮が必要と考えられる特徴的な個体群。
国リスト 環境省レッドリストに掲載されているが、愛知県において上記の要件に該当しない種。
※準定量的要件は鳥類(上段)及び昆虫類のトンボ目(下段)のみ適用。
表3 過去の生息種の要件
分 類 群 内   容
哺 乳 類 縄文時代草創期以降の確認記録があるもの。一過性の種、移入種、後期更新世以前の化石種は除外。
鳥  類 継続(経年的)確認記録がある種。迷行的に記録される種など一過性の種は除外。
爬 虫 類 標本等の確実な生息記録がある種。
両 生 類 標本等の確実な生息記録がある種。
汽水・淡水魚類 標本の確実な生息記録がある種。
昆 虫 類 標本等の確実な生息記録がある種。隣接県での生息状況も加味。
ク モ 類 標本等の確実な生息記録がある種。県内調査記録は昭和35年以降。
貝  類 標本等の確実な生息記録がある種。
表4 各評価項目の評価基準(鳥類)
評価項目 評価点 8 4 2 1 0
推定個体数(注) 0より多く
10未満
100未満 1,000未満 10,000未満 10,000以上
個体数の増減
急減した
(80%以上の
減少)
減少した
(50%程度の
減少)
減少した
(20%程度の
減少)
増減なし 増加した
生育環境の減少傾向
(餌の減少を含む)
極めて大きい 大きい あり なし 増加した
推定生息地数 県内の生息地
が2カ所以下
か、散在して
いて10未満の
つがいが収
容できる
程度
県内の生息地
が5カ所以下
か、散在して
いて100未満
のつがいが
収容できる
程度
やや少ない やや多い 多い
注:繁殖の評価に関しては、繁殖している雌の推定個体数とする。
表5 評価基準(昆虫類のうちトンボ目)
カテゴリー 基準
絶 滅 過去50年間信頼できる生息情報が得られていない。
絶滅危惧ⅠA類 絶滅率80%以上、かつ現存数1以下
絶滅危惧ⅠB類 絶滅率50%以上、かつ現存数1.5〜5
絶滅危惧Ⅱ類 絶滅率20%以上、かつ現存数5.5〜10
準絶滅危惧 絶滅率20%以上、かつ現存数10.5〜15
注1:現存の定義
現存     :約10年以内に現存を確認し、かつ生息環境も残されている。
現存可能性あり:約10年以内に確認されたが、発生地が不明で、現存を確認できない。または、約10年以内に現存を
        確認していないが、生息環境は残されていると推測される。
絶滅     :生息環境が破壊されており、生存の可能性はない、または極めて低い。
注2:絶滅率の定義
 絶滅率=((記録のある市町村数)−(現存する市町村数))÷(記録のある市町村数)
  現存する市町村は1、現存の可能性がある市町村は0.5、絶滅した市町村は0とする。